fc2ブログ

Entries

なのは→GS:転機

なのは→GS:転機

≪Round Shield≫

レイジングハートの声と共に、なのはの前面にミッド式の魔法陣が展開される。

「……効くかどうかわかんなかったけど、なんとかいけそうだね」

なのはは自分の魔法が悪霊にも有効なことに驚いていた。とは言え相手はなのはにとって全く未知の存在、魔法がどこまで有効なのか全く以てわからない。

≪そのようです≫

レイジングハートも驚いていた。霊力と魔力は似たようなものだとは捉えていたが、だからといってそれが悪霊に対して有効だとまでは思っていなかったのである。

でもこのままだとじり貧だね」

≪はい。ですが、砲撃するにしても距離が近すぎますし、何より私はまだ待機状態です≫

なのはが今展開しているラウンドシールドは、レイジングハートが自動的に展開したものだった。そのため、砲撃を放つには呪文を唱えきることが必要であり、またレイジングハートを展開するために必要な時間を編み出すこともできない。

「耐えるしかない、ね……」

シールドにかかる圧力は途切れることがなかった。次から次へと加え続けられる圧力に、なのはの表情が苦痛にゆがむ。前方の伸ばした右腕に疲労が溜まり、肘がこわばってくるのを感じていた。

 

「こなくそっ!」

忠夫は後ろから回り込んでくる悪霊相手に霊波刀で斬りかかっていた。夢の中では龍神の女神様や猿の神様と修行をしていた忠夫であるが、その動きを現実に持ち込むには経験がなさすぎた。当然技も型もあったものではなく、ただひたすらに、力任せに斬りまくる。時折サイキックソーサーを投げつけるが、霊波刀を振り回している時間の方が長かった。

「ああ、もう、次から次へとっ!」

もう何時間も霊波刀を振り回している感覚であった。実際はまだ数分程度なのだが、独学で霊力を鍛えていたために力の配分という発想がなく、おまけに次から次へと悪霊が現れるために終わりが見えてこない。しかも力任せに振り回しているため、疲労の溜まるペースもいつも以上であった。

「どうにか逃げることを考えないと……」

霊波刀を振り回していられるのも時間の問題だった。とにかく疲れの溜まるペースが速いのだ。タイミングを逃せば、逃げることすら適わなくなる。

「だけどタイミングが……」

全ては、そこであった。

 

「どうやって逃げる……」

奈津子は恐怖に震えながらも、必至に辺りを見渡していた。前方、後方、右方、左方、そして上方。次から次へと現れ襲いかかってくる悪霊を横目に、ただひたすら周りを“視”続ける。

なのはは悪霊の群れを必至になって防いでいた。忠夫はその防御をすり抜けてやってくる悪霊を必至になって斬っていた。だが自分は何もできない。護ることも、攻めることもできない。そう言う意味では、奈津子はあまりにも無力だった。けれども、できることはある。

「力の流れ、霊の通り道……どこかに穴があるはず……」

奈津子の瞳は青に染まり、力の流れを映し続ける。今まで経験したことのない圧力に眼が痛み、激しい頭痛が襲い、三半規管が激しく揺さぶられる。二日酔いに乗り物酔いを加え、さらに絶叫マシンに何回も揺られたかのような気持ち悪さだった。だが、その気持ち悪さを必至に押さえ込み、今できることを行う。

「こんなことならちゃんと習っておけばよかった……」

奈津子の祖母は霊の“視”える人だった。奈津子の母は“視”える人ではなかったが、その力は孫である奈津子へと受け継がれたのである。だが、あくまでも“視”えるだけであって、GSのように霊を祓えるということはなかった。祖母は祓えたらしいが、今の奈津子にそれほどまでの力はない。

祖母から手ほどきは受けていたものの、それほど熱心だったわけではない。あくまでも、“視”えてしまった時の対策程度であった。言わば、交通事故に遭った時には、という程度のことでしかないのである。だが、今そんなことを言っても仕方がないため、とにかく霊視によって逃げ道を必至に探していた。

****

「……これは想像以上だね……」

唐巣の表情が険しくなる。目の前には、一般人にすらそれとわかるほどの瘴気が広がっていた。その瘴気は、一般人はもちろんのこと、その手のプロであるGSにすら深刻なダメージを与えかねない。今はかろうじて結界に防がれているようだが、その結界もいつ壊れるのか時間の問題だった。

「被害が出る前に早く浄化しないと」

とは言え、これほどの瘴気を浄化するのは、一流と言われる唐巣にとっても骨の折れる仕事であった。だが大きな被害が生じかねない以上、事態は一刻を争う。

「先生、僕の方は準備ができました」

唐巣の隣に、金髪赤眼の少年が立つ。少年は、左手に聖書を、首にロザリオを下げ、そして今回の仕事に必要な道具が詰め込まれたリュックを背負っていた。

「じゃあピート君、行こうか。気を抜かないように」

「はい」

ピートと呼ばれた少年は、唐巣と共に階段を上り始めた。

 

もともと唐巣がこの場に来たのは、随分と昔に施された結界の補修をするためだった。その場所は霊力溜まりであり、さまざまな澱みが沈殿しやすい場所でもある。いくら祓おうとも澱みが解消されることはなく、常に周りから霊力が流れ込み続ける。そのため、その霊力は悪霊や妖怪を引きつける格好の餌となっていた。

そんな場であるから、澱みを常に浄化し、かつ外に拡散しないようにするための結界が張られている。その歴史は、少なくとも300年ほどは遡れるらしいことが、地元の好事家によって判明していた。だがその結界の効力がほとんど切れていることも、その好事家は発見したのである。そこで好事家は、知り合いである唐巣に連絡を取り、結界の補修を頼んだのである。

 

「これは……」

階段を上る足がだんだんと重くなっていく。頂上までは大した距離ではないのに、そこまでが非常に遠く感じる。

「先生……そろそろ上に着いてもいい頃なのに……」

異常はピートも感じていた。

「無限、回廊……」

「まさか……」

唐巣の漏らした言葉に、ピートの顔色が変わる。

「まさか無限回廊型の、結界……」

「閉じ込めるには最適だね……。外へと出て行かせず、ひたすら中に溜め込む。そして、一定以上溜まれば浄化……」

もちろん、入り込ませ、閉じ込めるものは条件付けられている。だが、

「ですが僕たちが入り込めたということは……」

「結界が暴走してる」

ピートが想像する最悪の事態。それを唐巣は肯定した。もちろんそれだけでなく、

「僕たちのほかにも入り込んだ人がいるかも」

「……だね」

それ以上に最悪な事態を想像する。

「急がないといけないね」

「はい」

2人は、結界の影響を最大限に遮断しながら、階段を駆け上がった。

****

「なのはちゃん、あっち」

「うん」

「こなくそっ!」

なのはは奈津子の指さす方へとラウンドシールドを向け、前進し続ける。忠夫はラウンドシールドを回り込む悪霊をひたすら斬りまくる。そして奈津子は、結界の基点、すなわち出口をしっかりと捉えていた。とにかくここから逃げ出すために、そして生き残るために、3人は必至に基点を目指す。

だが、悪霊の放つ圧力は一定どころか、基点に近づくに連れてますます強くなっていく。そのため、3人の歩みもだんだんと遅くなってしまう。何より‐‐‐‐

「なかなか着かないね」

「あと少しなんだがなぁ……」

‐‐‐‐出口らしき場所は捉えているのに、なかなかそこにたどり着けない。僅かな距離なのに、それが何倍にも引き延ばされているような感じだった。そして流れる空気の感覚に、なのはは違和感を感じ続ける。

≪マスター。空間の拡幅を感知≫

「まさか、次元回廊……」

レイジングハートの声に、なのはは違和感の正体を知る。結界魔法の中でも非常に高度とされる次元回廊型‐‐‐‐広域な空間を作り出し、かつその空間を循環させる捕縛結界。なのははその最高の使い手を知っていたし、なによりその効果を身を持って体験していた。なのに気づけなかったことに、なのはは愕然とする。

「全然わからなかった……」

≪術式や力の方向性の違いかと推測されます。こちらのオカルト技術は、私たちにとって未知数です≫

「そうかもしれないね。でもその分析は後にしよう、レイジングハート。今は生き残ることが先。私たちは、こんなのをいっぱい乗り越えてきたんだからっ!」

≪Yes、マスター≫

とは言え、手があるわけではない。あることにはあるのだが、それを展開するには時間がかかる。忠夫はとにかく必至に霊波刀を振るい、次から次へと押し寄せてくる悪霊を斬り続けていた。だが、その威力もスピードも、目に見えて遅くなっていた。そのせいか、身体のあちこちに傷を負っているのがわかる。奈津子は奈津子で、目眩や頭痛と必至に戦っているのが見て取れた。しかも口を押さえているところを見ると、こみ上げてくる激しい吐き気とも戦っているのだろう。それでもその視線は基点を捉えてはなさい。満身創痍を絵に描いたような2人に、1分、いや30秒でいいから時間を稼いでくれとは言えなかった。

何より、本来ならば、なのはが彼らを護らなければならなかった。だが、護ることができない。防御の堅さに定評のあるなのはであるが、その恩恵はあくまでもなのは自身に対してであり、他人にまで及ぼすことはできない。これまでの砲撃特化のツケをかみしめながら、なのははひたすら前進するしかなかった。なのはもまた2人に負けず劣らずの満身創痍ぶりではあるが、戦技教導官としてのプライドがなのはをぎりぎり踏みとどませる。

そして‐‐‐‐

≪マスター、前方に生命反応を感知。2名です≫

その言葉と共に、かけられ続けた圧力が振り払われた。その振り払った2人の男性を見るに至り、思わずが気が抜けたのであった。

 

なのは達の姿は唐巣もまた捉えつつあった。

「先生」

「ああ、わかってる」
唐巣とピートにかかる圧力だんだんと増していく。それに伴って、頂上への道もまた確実に近づいてきていた。そして聞こえてくる音、霊力の流れ、そして桜色の光。間違いなく誰かがそこに居、戦っている。もっとも自ら望んでそうなったのか、はたまた巻き込まれたのかまでは定かではなかったが。

「急ごう、ピート君」

「はいっ!」

そして駆け上がった2人が見たものは、悪霊の攻撃を必至に凌いでいた3人の少年少女だった。

「巻き込まれたか」

3人が3人とも霊能を持っていることはわるも、だからといって望んでここに来たわけではないのだろうと、唐巣は見当を付ける。

「しかしかなりの力ですね」

「そうだね。だけどそろそろ限界のようだ」

ひとりは前方に右手を掲げ、見たことのない魔法陣を展開させていた。ひとりは両手に霊波刀を展開させ、がむしゃらに斬りかかっていた。ひとりは、苦痛に歪みながらも、必至にこちら‐‐‐‐基点を見つめていた。おそらくは小学生か中学生かという年頃、そしてその年頃にしては非常に強力な、しかもそこらのGSよりもはるかに強力な力であった。だが、それもそろそろ限界だということも、見て取れるのである。

そして‐‐‐‐

「ピート君っ!」

唐巣のかけ声と共にピートは3人の元へと駆け寄った。

スポンサーサイト



この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://mizuasa01.blog120.fc2.com/tb.php/39-7eb4d96d

0件のトラックバック

4件のコメント

[C34] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

[C35]

をを、いきなりバトル。もうちょっとほのぼの(?)が続くと思ってたのにw
しかしそこで切りますか(^^;;;

[C36] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

[C42] 承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

カウンター

 

――――――――――――――

最近のトラックバック