fc2ブログ

Entries

なのは→GS:日常(Side-T)

なのは→GS:日常(Side-T)

忠夫には、物心ついた頃から見続けている夢がある。

最初は、何が何だかさっぱりわからなかった。ただただ、ひたすら怖くて悲しい夢だったことだけを覚えていた。夜中に起きて、両親の元に向かったことも何度あったことか。
その夢の主人公が自分だと気づいたのは、一体いつのことだったか。幼稚園の頃かそれとも小学校に入った頃か。とにかくその頃には、夢の中の人物は今よりもずっと成長した自分だということが、わかるようになっていた。ただ‐‐‐‐

「っかみさーーーん、堪忍やぁぁぁぁぁぁぁ!」

「やっかぁしいっ! とっとと成仏せいっ!」

‐‐‐‐とまぁ、何かにつけて見ず知らずの綺麗な女性にしばかれ続ける自分に、我がことながら引いてしまったのも、事実だった。あまりのしばかれように思わず相手の女性に文句を言いそうにはなったものの、大抵は自分が原因だけに何とも言えない諦観が働いたのも事実である。おまけに自分の言動が情けないというかなんというか。ひとまず、このような自分にはなるまいと決めたのも、その頃だった。まぁ、そんな夢を幼い頃に見ていれば、そりゃあ夜中に突然泣き出すわと、納得することもしばしばであった。

ただ、それでも惹かれたものはある。それは、自分の回りにいくつも展開される六角形の光の盾、右手、そして左手から展開される刀や手袋みたいなもの、そして何やら文字が籠められた翠色の綺麗なビー玉。情けないながらも、そして決して華麗と言えないながらも、それらを駆使して戦う様には、なぜか惹かれていた。今ではそれが霊力と呼ばれるものであることも、理解している。全ては夢からの知識である。

‐‐‐‐そして。

「最近、妙に回数が増えたような気がする」

昨晩もまた、忠夫はその夢を見ていた。夢の内容は実にさまざま。情けない言動に終始するあまり目覚めて自己嫌悪に陥るものや、さっそうと立ち回っていたために起きた後もその気分に引きずられてしまうものなど、順番に一貫性はない。だが、一貫性はないながらも、その夢が一続きのものであることは、知っていた。

「とは言え、一体何が起こっているのやら」

忠夫は首を傾げる。一続きの夢とは言え、これまではせいぜいが月に2回程度見れば良い方だったはず、だった。だがここ3ヶ月あまりは、毎週と言って良いほど見るようになっている。
とは言うものの、忠夫にはその原因を確かめる術はない。まさかまさか、夢が怖くて怖くてなどと両親に泣きつくわけにもいかない。そんなことをしたら、大樹に笑われるのがオチなのは、他ならぬ忠夫がよく知っていた。

「まぁ、考えていてもしかたない。どうせわからんし。それよりも、時間だ」

忠夫の朝は早い。朝5時には布団から這いだす。カーテンを開け、朝日を存分に浴びる。冬は布団の誘惑に駆られるが、それでも毎朝5時には起きるようにしている。もっとも今はその誘惑に駆られることがないだけに、楽なものである。

「なのねぇはまだ寝てるか……」

なのはもそれなりに朝早く起きるのだが、起きるのは忠夫よりもう少し後である。音を立ててまでわざわざ起こすのも何であるため、音を立てぬよう、抜き足差し足とゆっくりと階下に降りる。そして台所へ行き、まずは水を一杯。そして‐‐‐‐

「行ってきまぁす……」

これまた大きな音を立てないよう、細心の注意を払って玄関の扉をそっと閉めた。そして準備体操の後に走り出す。

‐‐‐‐それは“あのような”自分にはなるまいと心に決めた日からの、日課である。

****

「おはよーーーっす」

「おお、よこっち。今日は早いな。槍でも降るか?」

「やっかしい。年がら年中遅いわけじゃなかろうがっ!」

とは言うものの、横島の反論に説得力はない。実際、8時前には教室にいる忠夫は珍しいために、クラスメートが次から次へと揶揄するのも仕方がないのだ。忠夫もまたそのことをわかっているため、軽口程度に抑えている。

「にしてもほんと珍しいわねぇ。何かあったの?」

「奈津子……、俺が早く来たらそんなに変か?」

「もちろん」

当然とばかりに、奈津子と呼ばれた少女は頷いた。笑顔満開の、まるで語尾にハートマークや音符が付いていそうな声音に、忠夫は思わず脱力する。

「なつこという名前は、みんなこうなんやろか……」

忠夫は思わず天を仰いだ。考えてみれば、大阪時代の“悪友”である夏子もまた、何かにつけて忠夫をからかっていたことを、ほろ苦さと共に思い出す。東京の学校に転校してきて、たまたま宛がわれた席の隣に座っていたのが“なつこ”という名の少女であることを知った時には、何とも言えない妙な気分になったものである。おまけに自己紹介を受けた時に「なつこ」という名前に思わず反応してしまい、それがきっかけで大阪時代の「夏子」の話をしなくてはいけなくなったのも、まだまだ恥ずかしい思い出である。

「にしても横島が早めに来るのって、ほんと珍しいじゃない」

「ん、まぁな。そう言う時と言うかタイミングというか、そんな感じ?」

「何それ」

忠夫の何とも要領の得ない言葉に、奈津子は首を傾げた。忠夫の表情もまた奥歯に物が挟まったような感じを受けるだけに、なおのことである。

「理由はわからんけど、おかんにさっさと行けと叩き出された」

どことなく疲れたた表情を見せる忠夫に、奈津子もああと納得する。横島家が越してからまだ月日は浅いが、百合子がそのパワフルさ故に早くもご近所商店街の名物一家と化している。あのパワフルさを朝から発揮されれば、確かに疲れた表情を見せようと言うものだ。

「でさ、横島。今日転校生が来るんだって」

だから話題を切り替えたのだが‐‐‐‐

「へぇ。そろそろ夏休みなのに?」

「うん。教室はいる前に職員室通ったらさ、先生の所に知らない女の子がいて。で聞いてみたら、転校生なんだって。栗色の髪の毛で、セミロング‐‐‐‐肩の下ぐらいまであったかな。結構かわいい子だったよ」

「……はい?」

‐‐‐‐まさかそれがトドメになるとは、想像すらしていなかったりする。

****

「いやぁ、ただくんと同じ教室だとは、思わなかったなぁ……」

「…………」

あははと笑うなのはを横目に、忠夫は机に突っ伏していた。そうか、だから朝早く追い出されたのかと、だから百合子となのはの様子がおかしかったのかと、だから大樹が妙ににやにやしていたのかと、なぜその時に気づかなかったのかと、今更ながらに悔やまれる。忠夫にとって、なのはの登場は不意打ちに等しかった。新学期始まってからと聞いていたのだ、それがまさか終業式も間際になって来るとは、誰が想像しようか。

当のなのはにしても、まさか忠夫と同じクラスだということまでは想像していなかったらしい。もっとも、いかな百合子とは言え、クラス運営にまで口を出せるわけではなく、また義理も筋もない。学校側がなのはの身の上を知った上で、ならば忠夫と同じクラスの方が無難であろうと判断した上でのことであったが、なのはにしても百合子にしても、そこまで知る由はなかった。それだけに壇上に上がって教室を見回した時、忠夫の姿を見付けてなのは思わず驚愕してしまったのである。もっとも忠夫もまた驚愕の表情を見せており、その姿に教室中にクエッションマークが飛び交っていたりする。そしてトドメを刺した担任の一言は、教室を混乱の渦に巻き込むのに十分なものであった。

「で、横島は高町さん……じゃなくて、なのはちゃんと一緒に暮らしているわけだ」

奈津子は下から覗き込みながら、これまたにやにやと笑う。3ヶ月ほど前に忠夫が人助けをしたことは、既に全校集会で明らかになっている。だが、その相手が横島家に居候することになったことや、ましてや忠夫と同い年の少女であることまでは、忠夫が特に話していなかったこともあり、知られていなかったのである。

「で、なのねぇということは……なのはちゃんは横島のお姉さんになるんだ」

朝思わず叫んでしまった「なのねぇ」という言葉。今後、この言葉でさんざん弄られるであろうことは、間違いない。その“暗い”将来に、忠夫は頭を抱えていた。

「……どうせすぐにばれるんだし、そんなに頭抱えることないんじゃない?」

奈津子の呆れ声となのはの上擦った笑い声だけが、忠夫の耳朶を打っていた。

何であれ転校生というのはひとつのイベントである。それだけに、休み時間になるごとになのはの周りに人だかりができるし、なのはもそれを無碍にあしらうことはできない。フェイトが転校してきた時も確かそうだったと、むしろ懐かしさを覚えたぐらいであった。ちなみに忠夫は、そのあまりの人だかりに押され気味で、なのはを助けるどころではなかったりする。

それでも、放課後になればいい加減熱も冷める。なわけで、忠夫となのはは連れたって下校した。小学校も6年になれば男女一緒にというのも恥ずかしさを覚える年頃ではあるが、転校したのなのはにはまだ友達らしい友達はいない。また、なのはは忠夫の義姉として紹介されているため、はやし立てるものはいないというのも、関係していたりする。

「で、学校はどうだった?」

「楽しいよ。私服で通うのもカバンの指定がないのも」

忠夫はそういうものかと呟きながら、一方でその理由にも思い当たる。嘘か真かはわからないが、なのはは海鳴市というところにある聖祥大付属小学校という所に通っていたと言う話をなのはから聞いていた。聖祥大というからには私立なのだろうし、私立ならば学校指定の制服や通学カバンもあろう。だが、今日から通うことになった学校にはそのようなものはない。今年度しか通わないためにランドセルをわざわざ用意することもなかったし、そもそもランドセルは慣習であって指定ではなかったりする。

「なのねぇは学校から帰るとどうしてたん?」

「ん???そうだねぇ……」

なのはは小首を傾げながら、さてどこまで話していいものやらと思案する。さすがに管理局のことは話せない。当然魔法についても不可。この世界がオカルトに対してオープンだとは言え、自分の持つ技術・技能はやはりそうおいそれと話すことはできない。

「家が翠屋って喫茶店だったから、学校から帰ってきてから毎日手伝いをしてたよ。結構有名な店で、お客さん多かったんだ」

だから差し障りのない話にとどめることにした。

「そうなんだ」

話すたびにいろいろと思い出すのだろう、なのはの表情がだんだんと嬉しそうなものへと変わっていく。だが、その中に時折影が混じるのを、忠夫は見逃さなかった。しかも、儚さと寂しさを感じさせる笑みにも見えていた。

「それでね……」

だが、忠夫から口火を切った手前、それを言うことはできなかった。話しかけた時はあまり深く考えていなかったが、それでも少し時間が経てば、考えてみればデリカシーに欠けた質問なのだと、わかったから。そしてこの時に見せたなのはの表情が、その後の2人の関係を決定づけたことを知るのは、また先の話。

****

さておき。

なのはが住むことで変わることもあれば、変わらないものもある。変わらないもののひとつが夢の中で見たあの力‐‐‐‐霊力の鍛錬であった。

とは言っても、専門的な訓練など望むべくもないため、夢の中で見た霊能をひたすら再現することに費やしている。すなわち、全身の霊力を一点に集め、六角形状の盾を作り出す。霊力を右手と左手に集め、籠手を作り出す。そして、籠手を霊波刀へと変化させる。これを順番に、あるいはランダムに行う。あの翠色のビー玉も作ろうとはしているが、これは残念ながら成功していない。専門的な訓練を受けているわけではないため、現在はこの基本3種の鍛錬と、その派生系の訓練に終始していた。

「大夫うまく動くようになったなぁ」

忠夫は感慨深げにサイキックソーサーを見つめる。忠夫の前には2つのサイキックソーサーが展開され、よたよたとではあるが、忠夫の念ずるままに動き回っていた。動きが大味な上に制御も甘いが、現時点ではおおむね成功と言えよう。何せ最初はサイキックソーサーを1枚作るだけで猛烈な疲労感に襲われたものであり、ましてや動かすと言うところまではいかなかったのである。それが今や2枚作っても疲労はそれ程ではなく、またある程度自由に動かせるようになるとなれば、感慨深くなるのもさもあらん、であろう。

「……今度はもう少しスムーズに動かしたいなぁ。まぁ、まだまだということやな」

それなりに動かせるようになったとは言え、その動きはまだ鈍重というレベルである。鋭く、素早くというには、まだほど遠かった。サイキックソーサーは攻防一体の霊能である。そうである以上、何枚展開しようと思い通りに動かせて初めて意味を持つことぐらいは、十分に理解していた。

「さて、と、次は……」

サイキックソーサーを1枚消すと同時にハンズオブグローリーを展開させる。籠手状から霊波刀状へ、そして再び籠手状へ。時折サイキックソーサー形態も混ぜながら、何度も何度も繰り返す。籠手の大きさを変え、形を変え、霊波刀も長く、そして短く、あるいは太く、そして細く。しかも右手だけでなく、左手も交え、さらには右手と左手とで違う形態を展開させながら。おまけにその間、消さなかったサイキックソーサーは空中に浮遊させている。

「なかなかうまくいかないなぁ……」

とは言うものの、それぞれの変換はなかなかスムーズにはいかず、右手と左手とで別々の形態を取る作業も失敗することが多かった。実のところ、右手と左手とで別々の作業をするのは想像以上に難しく、忠夫が手間取っているのもある意味当然ではあった。とは言うものの、見る者が見ればその行為の高度さに目を見開くのだが、そこは独学の悲しさ、忠夫はそのことを知らない。

スポンサーサイト



この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://mizuasa01.blog120.fc2.com/tb.php/37-11474e28

0件のトラックバック

4件のコメント

[C27] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

[C28]

む、何かいろいろと怪しげなフラグが(^^;

[C30] 感想

この段階でサイキックソーサーとハンズオブグローリーを使えるとは、この横島は原作の横島よりも強く成りそうですね。この横島はGSに成るのでしょうか?そして、なのはが横島の事を如何意識していくのか楽しみにしています。
・・・しかし、なのはは姉と言うより妹だと思うのですが・・・?

[C38] いつも読んでいます

最近更新が無いですが、続きを楽しみにしています。
  • 2008-08-21
  • 荻窪
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

カウンター

 

――――――――――――――

最近のトラックバック