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なのは→GS:日常(Side-N)

なのは→GS:日常(Side-N)

「今までありがとうございました」

「いやいや、これが仕事だからね」

7月上旬。そろそろ梅雨も明けて本格的に夏入りしようかという頃に、なのはは退院した。ただし、あくまでも退院しただけであり、週1日程度は経過観察のために通院する必要はある。

ところでなのはの入院期間は約3ヶ月であった。入院当初、なのはは最低でも全治六ヶ月、リハビリも含めると1年以上と診断されていた。それが約半分で済んだのは、なのはの怪我がオカルト絡みとして診断されたため、病棟が急遽整形外科から霊障外科へと変更されたためである。霊体や霊基構造が傷つき、悪霊などに取り憑かれやすくなっている状態と判断されたため、なのはの治療には霊的治療も併行して行われることとになった。その結果、治療の進行が非常に早まり、入院期間は当初の半分で済んだのである。

もっとも、霊的治療を行えば誰でも治療期間が短くなるというものでもない。霊的治療によってリンカーコアが回復しただけでなくその許容量も増加し、それが結果としてなのはの怪我の回復にも劇的な効果を与えた。これとても魔導師ならば誰しもというわけではなく、なのはがAAA級以上のランクを持っていることに加え、まだ成長期であったことも関係している。 まだまだ伸びしろは大きいのだ。おそらくは、はやてやフェイトであっても、同様の結果が見込まれる。

とは言うものの、それでもなのはのような事例は特殊である。実のところ、傷ついたリンカーコアを回復させる術を、管理局は持っていない。通常の治療と同じような治療を施すことができない。リンカーコアの場合は、ただただ自然治癒力に任すという方法しか採ることができない。そのために、リンカーコアが必要以上に傷つくことにより、管理局を引退する魔導師も多いのである。そして、なのはが負った傷は、間違いなくなのはの翼をもぎ取る‐‐‐‐つまりは引退するに十分だった。レイジングハートを起動させることはできても、魔法の行使ができるかどうかというレベルの怪我だったのだ。それだけに、なのはもレイジングハートも、二度と魔法を行使できないことを覚悟していた。

だが、なのはが受けた霊的治療は、傷ついたリンカーコアを回復させるに十分だった。それのみならず、リンカーコアの許容量までもが増大している。故に、なのはもレイジングハートも、最初は一体何が起こったのかとパニックになったほどである。

****

「じゃあお母さん、行ってきます」

「行ってらっしゃい。気を付けてね」

「はーい」

なのはの朝は、リハビリのための軽いランニングから始まる。3ヶ月近い入院生活は、さすがになのはの体力を著しく低下させていた。もとから体力に自信の無かったなのはにとって、体力の低下は致命的でもある。

また体力の向上は、なのはが今後魔導師として大成するために必要なことでもあった。3ヶ月近い入院生活は、なのはに失敗の原因を必然的に内省させる。成り行きで魔法を使うようになった2年前から、つい最近の撃墜事件までを振り返り、その間の魔法行使を振り返り、ついでに生活リズムを振り返り、そして問題点を洗い出す。そして辿り着いたのが、

「やっぱ、体力不足と疲労の蓄積、かな」

≪そう考えるのが妥当かと≫

と言うことであった。始まりが始まりだっただけに、なのはの魔法は中・遠距離攻撃に特化している傾向がある。中・遠距離攻撃魔砲を扱える魔導師は少なく、ましてや特化型に至っては希少種扱いである。しかもなのはは大規模攻撃魔法の連発を支えるだけの魔力までをも有している。おまけに管理局でも数少ない空戦魔導師であり、しかも飛行能力もトップクラスであった。それだけに出動はひっきりなしであった。

だが、何事にも限界は存在する。それは、大規模魔法は身体に大きな負担がかかると言うことであり、なのはの身体はその負担に耐えられるほどにはできあがっていないと言うことである。若さ故にその負担を気にしないできたが、だからこそその負担は身体の奥底に沈殿し続ける。それがあのような結果に繋がった‐‐‐‐というのが、結論であった。そもそもが学校と管理局との二足草鞋なのだ、負担がたまらない方がおかしい。

ならば、その結論に基づいて問題点を改善すれば良い。そしてその改善策は、

「うう、今日も筋肉痛だ……」

≪こればかりは仕方ありません≫

「うう、レイジングハートが冷たいよぅ……」

≪…………≫

体力向上と筋力アップという極めて基本的なものであった。幸か不幸か、この世界ではなのはは学校だけに専念してればよいのだ。ちなみに、なのはは1学期終了間際に転入することが決まっている。

さて、なのはが毎朝行うリハビリは、もうひとつある。

「‐‐‐‐リリカルマジカル」

なのはの足下に桜色の魔法陣が展開される。

「福音たる輝き、この手に来たれ。導きのもと、鳴り響け」

掲げた左手に桜色の魔力弾が形成される。

「ディバインシューター、シュート!」

解き放たれた魔力弾がなのはのコントロールの下、複数の空き缶へと襲いかかっていく。つまりは、魔導師としての基本的な訓練の再開であった。3ヶ月近いブランクにより、勘は確実に落ちている。しかもリンカーコアの容量が上がったはいいが、その感覚と制御に身体がまだついて行けていない。そのために、なのはが行ったのは‐‐‐‐

≪25、26、27…………≫

空き缶にあたる魔力弾の回数を、レイジングハートが冷静に数え上げる。

‐‐‐‐基本へと立ち戻ることであった。ただし、この基本は2年前のそれとは違い、同時制御される魔力弾は12ほどある。そして標的としている空き缶の数は、形成された魔力弾の数を上回る。魔力弾の複数制御に加え、弾数以上ある標的に魔力弾を当て続けるという精密コントロールまでを行っている。しかも魔力弾を全方位に展開している。つまり、前後左右、そして上。必要とあらば、宙に浮かびつつ、下。

病み上がりにしては少しハードかもという気がしなくもないなのはではあるが、一方でそれぐらいしないと勘を取り戻せないことも知っていた。

≪60、61、62…………≫

カウントが60台に入ってからは魔力弾の速度が急激に上昇し続ける。魔力弾が空き缶にあたる音の感覚が短く、鋭く、そして強く響き渡る。

≪101、102、103…………≫

カウントが三桁に達したあたりから魔力弾の動きはもはや弾幕レベルへと達し、

≪161、162、163…………≫

魔力弾は速度を上げたまま弾道軌道をより遠くへと押し広げ、

≪…………198、199、200≫

カウントが200に達するに及び、

「今日は14個かぁ……」

≪70点ですね≫

「うう、レイジングハートがきついよぅ……」

空き缶は時間差でゴミ箱へとはじき飛ばされるのだ。そして入れ損ねた空き缶をゴミ箱にきちんと入れて、基礎訓練は終了する。

****

「それじゃベッドに横になって、ゆっくりと呼吸をして下さい」

「はい」

「呼吸に意識を向けながら、丹田に意識を集中させて……」

なのはは言われるがままに、丹田へと意識を集中させる。その横では霊障外科の霊的治療技師がなのはの霊体と霊基構造をゆっくりと調整していた。

退院はしても、完治するまでは通院が必要である。肉体的には当然ながら、霊的にも必要であった。退院が許されたとは言え、なのはの霊体と霊基構造が負った傷が通常生活が送れる程度には回復したという程度の意味合いでしかなく、完治にはまだまだ時間がかかる。そのためになのはは、週に1日通院することになっていた。

呼吸を意識し、技師によって調整される霊力の流れを意識する。霊力が身体全体を巡るにつれて、全身が温かくなってくるのを感じ、そして傷を負った箇所がとりわけ熱を持っているの感じ始める。技師に言わせれば、霊力が巡ることによって肉体の自然治癒力が増加し、霊体と肉体とのズレを矯正しようする働きが生じた結果だと言うことらしい。

リンカーコアが回復したのは、この霊的治療が原因なのではないかと、なのはとレイジングハートは推測している。そして、霊力と魔力は、元は同じ力をそのように呼び分け、使い分けているだけではないか、とも推測していた。

治療の合間に技師から聞いた話によれば、霊力とは魂の力が外部に顕現したものなのだとか。霊力を循環させることにより、自然治癒力の劇的な向上はもちろんのこと、肉体能力までもが向上するという。

世界には神魔と呼ばれる存在もあり、その肉体は霊力によって擬似的に構成されたものである、ということも聞いた。そしてなのはには、そのようなあり方を示す存在が身近にいたのだ。2年前以来の付き合い、そしてこの世界に来る前に最後に会った友人。すなわち、夜天の王に付き従う騎士ヴォルケンリッター。リンカーコアを核として、魔力によって擬似的な肉体を得ている存在。そこに思い至れば、魔力と霊力とは、実は同一のものなのではないかと見なすのもまた、道理であった。

その結論に達したなのはは、自宅でもできる霊体調整のやり方を技師から教わっていた。名目上は治療促進のために、その目的は仮説を検証するために。そして‐‐‐‐

「魔力の循環が大夫スムーズになったね」

≪はい。リンカーコアの活性も以前の調子に戻りつつあります≫

‐‐‐‐魔力を高純度で身体に循環させることに成功させつつあった。それはなのはの怪我を予想以上の速さで回復させた、ひとつの要因でもあった。

ミッドチルダ文明の基礎である魔法は、個人の資質によるところが大きい。だが、個人の資質にはばらつきも大きい。ばらつきが大きいのは仕方がないにせよ、一定水準以上の資質は保ちたい所ではあるし、その水準は高いに越したことはない。と言うわけで、リンカーコアに関する研究も熱心に行われている。だが、あまたの資源が投入されているにもかかわらず、リンカーコアに関する知識は驚くほど少ない。実のところ、リンカーコアの存在は明確に捉えられているわけですらなかった。魔力素が魔力に転換され、転換された魔力が魔法という形で顕現される過程から、仮説的に設定されている器官でしかない。

そのためか、リンカーコアに関する研究は、魔法の効率的な運用と新しい魔法技術の開発という実務的な側面に大きく偏っている。魔法に関する研究、つまりは魔力の効率的な顕現、すなわち術式に関する研究は盛んに行われども、魔力そのものに関する研究は、それほど盛んではないのだ。魔力そのものに関する研究は、どちらかと言えば個人芸に属する。なために‐‐‐‐

「魔力を身体に循環させるなんて、考えたこともなかったなぁ……」

≪はい。おそらく大崩壊以前ではそのような研究も行われていたと聞きますが、大崩壊以降では失われた知識です≫

‐‐‐‐というようなことも、あったりする。

****

天には満天の星空、地もまた満天の煌めき。百万ドルのとは言わないが、天地に広がる光の洪水は、いつ見ても良いものだとなのはは思う。

「やっぱり空はいいね」

だからなのははくすりと笑う。撃墜されたとは言え、空を飛ぶことに忌避感はない。むしろ、3ヶ月近くも空から離れていたために、空への飽くなき希求心があることに気が付いたぐらいである。とは言うものの、やはり3ヶ月近いブランクのために、以前のような戦闘機動を行うにはまだまだ時間がかかる。そんなわけで今は、単純に空を飛んでいるだけであり、風に身を任せているだけである。それでも、ゆったりと空を飛ぶことだけに専念できる分、以前とは違った喜びがあるのも、事実だった。

だが、いつまでも浸っているわけにはいかない。

≪マスター、300秒を切りました。地上へ降りることを提案します≫

「……もうそんな時間が経っちゃったんだ」

ただただ空を漂っていたなのはに、レイジングハートが声をかける。ゆったりした時間に水をさしたかのような警告に、レイジングハートの声も心なしか申し訳なさそうだった。

「ありがと、レイジングハート」

なのはは、ゆっくりと高度を下げ始めた。羽根が重力に引かれてゆらゆらと落ちるように、なのはもまた風に身を任せながらゆらゆらと降りていく。空がだんだんと高くなり、眼下の洪水はその正体をはっきりとさせていく。とは言え、なのはの着陸点はさすがに町中ではない。住宅街からやや離れた、昼間でもどちらかと言えば寂しい雰囲気のする神社である。人のあまり寄りつかない神社ではあるが、雰囲気がどことなく故郷の八束神社を彷彿させるため、なのはは好んで立ち寄っていた。

自宅への帰り道、なのははふと思う。

「本当は、ただ空を飛んでいたいだけなのかもしれないな……」

突然巻き込まれた魔法絡みの事件、その過程で急速に開花させた魔法の才能。そして繰り広げられた命がけの戦闘。その持てる力を最大限に発揮するために選んだ、教導隊への道。考えてみれば、ただただ戦うだけの毎日だった。なんのために戦うのか、なぜその力を振るうのか、よくわからないまま突っ走ってきたことを振り返る。

管理局に入って間もない頃、なのはには御神・不破の血が確かに流れているのだと、士郎が言っていたことを思い出す。恭也と美由紀もまた、そう言っていた。だがなのはは、御神・不破の血がいかなるものなのか、よくわかっていない。何かを護る時にこそ最大限の力が発揮されると言うが、果たして自分が護ってきたのは一体何だったのだろうかと、この3ヶ月間考え続けていた。 そもそも護るってなんだろう、とも。

「空を飛ぶことが大好きで、空にいられれば十分で……そのために教導隊を選んだ、のかな……」

あの激務から離れた今、なのははそう思う。魔法に関わっていなければ、将来の夢はたぶんお嫁さんで、翠屋の二代目だったことも、思い出している。管理局に入ることを決めた頃にはその夢を捨てて別なものに置き換え、激務に追われる中で思い出すことすら忘れていた。だが、今この世界に流れ着いた時、かつて抱いていた少女らしい無邪気な夢を、だがかけがえのなかったはずの夢を思い出している。

「間違っても、お父さんと結婚する、ではないけどね」

なのははくすりと笑う。よくそう言っては士郎が相好を崩していたのを思い出していた。今振り返って改めて感じる幸せのひとつ。そういう幸せがあることを、なのはは思い出している。だから、もし元の世界に戻っても、これまで通りの生活を送ることは、たぶんないだろう。あそこにはかけがえのない仲間もいる、だから管理局にはいるだろし、教導隊にもいるだろう。けれども、これまでとは違う生活になるはずだ。何となくではあるが、なのははそう感じていた。

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2件のコメント

[C16]

続きキターーーーーーーー!!
クロス先の人々との交流はほとんどなかったけど(これからですよねw)、まったりしてていい感じでした。

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