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よこりりA’s:その21

その21

リンカーコアを蒐集されながらも、なのはが放ったスターライトブレーカーはそのまま結界をぶち抜いて消滅させた。その残滓である魔力もどきが、雪のように海鳴市街に降っている。襲撃者はと言えば、すでにこの場から立ち去っていた。マリアが追跡を行っているだろうとは思うが、行き先を完全に特定することは難しいだろうと、横島は考えている。もっとも、襲撃者が立ち去ったことは、横島にとってはさほど重要な問題ではない。問題なのは‐‐‐‐

「結界を抜いたか……」

横島の表情は厳しい。

「まずいことに、なりますね……」

ほたるの表情も険しい。問題なのは、なのはが放った砲撃であった。最善とは言えないが、起死回生としてはこれほどの手はない。だが、起死回生であるがために、問題であった。何せ、広域結界をあっさりと打ち抜いた砲撃である。それだけに‐‐‐‐

「断末魔砲に匹敵するかもな」

横島がそう思うのも、無理もなかった。断末魔砲‐‐‐‐アシュタロス事件の最後のキーとなった逆転号の主砲であり、妙神山など人界における神魔の拠点を一撃で打ち破ってきた実績を持つ。今回張られていた結界が妙神山ほどに堅いとは思えなかったが、それでも並の砲撃では撃ち抜くことはできなかったであろう。オカルトGメンが結界破壊車両を総動員しても破壊できるかどうか。自衛隊を初めとする国軍が総動員されても怪しい。だが、なのはが最後に放った砲撃は、それをあっさりと撃ち抜いた。

「神魔が、動くかもな……」

横島の言葉にほたるが頷く。結界を撃ち抜いた時の余波は、結界の外にも漏れている。その魔力もどきの反応は、各所で観測されたことだろう。そしてその威力は、アシュタロス事件の後始末で神経を尖らしている政府と、そして神魔を刺激することは、間違いなかった。ましてや今は、デタント推進派が優勢なのだ。なおのこと、神魔が敏感に反応しかねない。

「……しばらくは遺産で押し通すか」

この事件が、当初想像していた遺産絡みとは全く違うものになっているのは、横島もとうに気づいている。だが状況がいまだ錯綜している以上、しばらくは遺産に原因を押しつけるのが得策であった。そもそも遺産の全貌なんて分かっていないのだ。断末魔砲並の遺産があったとしても、おかしくはない。

「マスター!」

ほたるが短く叫ぶ。その声に何事かと振り返った横島の目に、なのはが倒れ込む光景が映った。

横島とほたるがなのはの元に辿り着いた時、カオスとマリア、アリサもまたなのはの元へと辿り着いていた。その後しばらくして、フェイトとアルフ、ユーノも辿り着く。

「あんた達は?」

突然現れた見知らぬ姿に、アルフが厳しい視線を投げかける。なのはが突然襲われ、倒れた。レイジングハートも大破した。フェイトは無事だったものの、やはりバルディッシュは大破した。自分はと言えば、向こう側の使い魔‐‐‐‐向こうに言わせれば守護獣らしい‐‐‐‐に一方的に押されていた。技量も経験も、何もかもが向こうが上だった。今回の戦闘は、完全な負け戦だったのだ。そこへ来て、なのはの元に現れた正体不明の人物が5人。負け戦で気が苛立っているアルフは、警戒心を解けない。

「ん???通りすがりのゴーストスイーパー?」

横島の答えもまた、人を食ったものだった。警戒すべきは横島側も同じである。相手の正体がはっきりとしない以上、必要以上の情報を与える気はない。

「通りすがりって、なんだい!」

当然、アルフは激昂する。

「アルフ、この人達は悪い人じゃないと思うよ」

「そうだね。あっちの仲間だったら、ここに来るわけないし」

フェイトとユーノはそんなアルフを諫めるものの、それで収まるアルフではない。アルフは 見た目16?17歳程度とは言え、実年齢はフェイトとそう変わるものではない。良くも悪くも、アルフは自らの感情を自制することができない。

「だけど!」

「アルフ、あれを見て」

そんなアルフに、フェイトは一方を指さす。そこには、泣きじゃくりながらなのは抱きかかえる一人の少女‐‐‐‐アリサが居た。

「あの子、知ってるでしょう? アリサだよ」

アリサの側にはフェイトの見知らぬ少女が2人いたが、彼女たちもアリサの関係者なのだろうと、フェイトは判断する。

「アリサって、ビデオメールに映ってた?」

「そう。向こうは、まだ気づいてないと思うけどね」

そう言われて、アルフはなのはからの手紙を思い出す。あの中には、なのはの友達として紹介されていた2人の少女がいた。その少女の姿も声も、アルフは知っている。だが媒体越しの情報だったことと、事態が事態なだけに、今目の前の少女とが、結びついていなかった。だが、アリサだと知れば、アルフが警戒する必要はない。ここに居るのは、おそらくアリサの関係者なのだろうから。だから。

「わかったよ」

アルフは素直に引いた。

その代わりに、フェイトが一歩前に出て、横島と対峙する。

「はじめまして。私はフェイト・テスタロッサ。時空管理局の嘱託魔導師で……なのはの友達です。貴方達は、どなたですか?」

‐‐‐‐さて、どうするか。

横島の前に立った少女は、アリサやなのはと同い年ぐらいの少女だった。

‐‐‐‐偽名じゃ、まずそうだものなぁ。

フェイトの視線は横島を強く捉え、虚言を許さない気概に満ちている。横島に元の雇い主を彷彿させる、視線だった。だから。

「……横島忠夫。さっきも言ったが、ゴーストスイーパーだよ」

横島は、名前と職業だけを完結に述べた。シグナムの時と同じで名前を教える気はなかったが、向こうが名乗ってきた以上、自分が答えないわけにはいかない。偽名でも良かったのだろうが、フェイトと名乗った少女の視線は、それを許さなかった。何より、今偽名が思い浮かぶわけでもなく、これから先も関係する可能性が大きい以上、偽名を使うのは得策ではない。

だが、目の前の少女が、納得をしていないことも事実だった。そんな表情に、横島は苦笑する。

「聞きたいことはいっぱいあるだろうけど、後でな。こっちも聞きたいことあるし。取り敢えず今は、なのはちゃんの治療な」

フェイトは不承不承ながらも頷く。後でということは、この先もこの人達は自分たちと関係するつもりなのだと判断できる。それに、なのはの容態も気になっていた。

そんなフェイトに構わず、横島はほたるに声をかける。

「ほたる、なのはちゃんは?」

「衰弱は激しいですけど、命に別状はありません。ただ……」

「ただ?」

「肉体だけでなく霊体も結構傷ついていますので、しばらく安静が必要かと」

ほたるの報告に横島の表情が苦くなる。霊体が傷ついているということは、霊基構造にも何らかのダメージを受けたということを意味する。さすがに“かつて”の自分のようなことにはならないだろうが、状況としてはあまり望ましいものではない。

「護符で何とかなる?」

いざとなれば文珠でも対応できるが、何でもかんでも文珠を使うことは、牛刀割鶏になりかねない。使わずに済むのなら、それに越したことはない。

「大丈夫でしょう。どっちにしても、護りは必要ですから」

霊体の保護、つまりは霊基構造の修復は、霊体を霊的に防御するためにも必要であった。霊体の欠損はいわば肉体の霊的な護りが緩くなった状態であるため、悪霊などに取り憑かれやすくなる。場合によっては、乗っ取られることすらもある。例え悪霊に乗っ取られなくても、将来に渡って何らかの障害が残る可能性も否定できない。ちなみに霊体の損壊は、ゴーストスイーパーのよく挙げられる引退理由である。

「……だとさ」

横島はフェイト・アルフ・ユーノに向き直った。

「そっか、よかった」

フェイトは胸をなで下ろす。だが、分からないこともあった。霊体が傷ついているって、何だろう。霊体とか護符とか護りとかは、一体何なのだろう、と。横島はと見れば、思考の海に沈んでいる。自分の疑問をぶつけるのはもう少し後になるのだろうとフェイトは考え、ひとまずアースラと連絡を取ることにした。

「さてと、これからどうしたものかねぇ……」

一方横島はといえば、当面の懸念が去った今、今後のことで悩んでいた。ほたると話したとおり、下手をすれば神魔が動くと横島は踏んでいる。当然ながらオカルトGメン、つまりは美智恵にも連絡をいれなくてはならない。まだ美智恵から連絡はないが、報告を待っているのは間違いなかった。横島は当面は遺産で押し通すつもりでいるが、押し通すためには、状況を確認しなくてはならない。

「って、さっきから、そればっかやんか……」

横島は嘆息する。結局、何一つ分かっていないに等しかった。というよりも、何一つ分かっていないということが分かった、というのが正解であろう。それがわかっただけでも大したものではあるが、だからといってどうしろと言うのか。

「先は長いなぁ……」

再度、嘆息した。

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