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よこりりA’s:その18

その18

「マスター、魔力もどきの衝突を感知。どうやら戦闘が始まったようです」

カオスとマリアを無事に玄関から送り出した後、横島とほたるもまた部屋を後にした。向かった先は結界の中心点と思われる場所である。だが、目的地に着く前に、ほたるは既に戦闘が始まっていることを横島に告げる。強大な力の奔流は横島も捉えていた。そのあまりもの力の大きさに、横島の表情が自然と険しくなる。しばらくして開けた視界に飛び込んできたのは、中心点とおぼしき場所で繰り広げられる赤色と桜色の閃光のぶつかり合いであった。

「結構な大きさですね……」

ほたるが呆れたような声を出す。某バトルジャンキーの霊波砲と言えどもあそこまでの出力を出せるかどうかというその大きさに、横島には引きつった笑みしか浮かばなかった。

「どうしますか?」

「……ひとまず近くのビルに上がろう。状況がさっぱりわからん。済まん、ほたる」

ほたるは軽く頷くと、そのまま横島を抱きしめた。久々に感じてしまった身体の柔らかさに一瞬意識が違う方向に飛ぶも、横島はすぐに意識を目の前の出来事へと切り替える。

「じゃ、頼む」

横島がそう言うや否や、ほたるは自らの身体を浮かせた。ほたるは空を飛べ、横島は飛べない。何気に空戦経験の多い横島ではあるが、それでいて空を飛ぶという技能は持っていないのだ。もちろん文珠で飛んでもいいのだが、何でもかんでも文珠頼みというわけにもいかない。だが、今日みたいな偵察行の時は、空を飛べた方が良い時もある。
そんなときは、横島はほたるに抱きかかえられて空を移動することが多かった。最初の頃は気恥ずかしさでどうしようもなかった横島であるが、今はそれなりに慣れてしまっている。

‐‐‐‐ほら、まぁ、妹だし、一応。

ここ数ヶ月で手に入れた新しい呪文のおかげである。

そんなこんなで見晴らしのいい屋上に着くと、横島は双眼鏡を出して状況を確認し始める。ほたるはさらに一段高い場所へと写り、記録写真を撮り始めた。

「……にしても」

目の前に光景に、横島はただただ呆然とする。

「どこの戦場なんだろうなぁ……」

煌めく閃光、轟く轟音、ぶつかり合う衝突音。その全てが戦場に居ることを横島に思い知らせ、“魔砲”と言う言葉を浮かび上がらせる。砲撃を撃っているのは、ロボットでも機動兵器でもパワードスーツでもなく、ましてやビームライフルでも対軌道・対戦艦ライフルでもなく、生身の人。魔法というファンタジー、しかし砲撃というSF。現実逃避したくなるのも宜なるからな、であった。

 

「なのはちゃん、ボロ負けですねぇ……」

そして、ほたるが伝えてくる戦況は、半ば一方的と言うべきものだった。ひとまず馴染みとも言えるなのはは傷つき、おそらくはその救援と思われる少女も、健闘してはいるが、押され気味である。少女の使い魔と思われる反応はもう一箇所に現れた反応と衝突し、やはり押され気味であった。

「やれること、ないなぁ……」

横島はぽつりと呟いた。だが、声には安堵の感情が潜んでいる。砲撃飛び交う状況下でできることなど、そうありはしないのだ。皆無とは言わないが、下手に参入したところでろくなことにならない。そもそも状況が錯綜している段階で参入することは得策ではなかった。

「すぐ近くに魔力もどきを感じますけどどうします? 戦闘には関わっていないようですよ」

ほたるが横島に呼びかける。

「それはいいかも。行って、お話聞いてこようかぁ……気は進まんけど」

だから、戦闘に直接参加していない関係者がいるのは、僥倖だった。

「了解です、マスター」

ほたるは一拍置く。

「それと、念のため文珠で気配の【遮】断をお願いします」

戦場と化しているこの場所で、横島とほたるが無事でいられる理由は2つ。ひとつは、向こうの戦況があまりにも混迷としすぎていて、こちらまでに気が及ばないこと。もうひとつは、横島とほたるが行っている隠形にあった。だがその関係者に近づく以上、直接戦闘に関係していないとは言え、念には念を入れる必要がある。

「そうだな」

横島はほたるに言われるまでもなく、【遮】の文珠を発動させるつもりでいた。2人を翠色の光が包む。これにより、横島とほたるは、光学的にも霊的にも熱的にも、あらゆる気配から自身を遮断することとなる。もっとも、気配の遮断のされ方が返って不自然になるために、勘のいい相手にはその不自然さを察知されてしまうという欠点もあった。だが、通常ならば、自分たちで文珠を解除しない限りは、そう簡単に相手に見つかることはない。

「にしても」

時々飛んでくる流れ弾を避けながら、横島はぼやく。

「後始末が大変だなぁ……」

これほどの戦闘である、建物や道路への被害は尋常ではなかろう。結界が解除された後は、一体どうなっているのか想像すらしたくなかった。おまけに、なぜか美智恵が胃を辺りを押さえている光景が浮かぶ。

「……因果は巡るのか?」

思わず横島はぽつりと呟いた。

「さぁ? でも偉い人はそのためにいるんですから、いいんじゃないですか?」

同じ事を考えたのか、ほたるはあっさりと言い放つ。

「……美神さんみたいなことを……」

ほたるの身も蓋もない言い方に、横島は元の雇い主を思い浮かべ、苦笑する。

「でもまあ、そういうものだし」

だが横島もまたそう思っていたりする。それは、間違いなく元上司美神令子の教えだった。

 

数分後。横島とほたるは目的の場所に到着する。

「ほう、これはまた美人のねーちゃんだな」

目の前の女性は、年齢の頃は22?23の、間違いなく美人と言える女性だった。

「にしても、妙な所だけファンタジーだなぁ……」

緑色を基調とした服と帽子を身につけたその姿は、まるでゲームに出てくる神官のようであった。砲撃飛び交う戦場というSFにそぐわない服なのだ。横島が呟いたように、服だけはファンタジーであった。

「だがなんとなくデジャブを感じるのはなぜだろう……」

そう、どことなくほんわかとした姿に、横島はなぜか六道冥子を思い出していた。そして冥子つながりともなれば。

‐‐‐‐まさか、暴走するのか?

ということもまた、連想させる。

六道冥子。平安時代から続く式神遣いの名家にして、ぷっつんの女王。ちょっとしたことでもすぐにパニックになって式神を暴走させるため、建物の崩壊を招くこと多数。そのぷっつんに巻き込まれること、多数。

‐‐‐‐いやいや、冥子ちゃんみたいのがそうは居るとは思えん。否、思いたい。

そんな後ろ向きな思考の海に沈む横島ののど元に、ほたるの霊波刀が突きつけられた。その感触に横島は現実へと引き戻される。

「えっと、ほたるさん、これは何でせう……」

もちろん、横島はなぜほたるが霊波刀を突きつけたのかわかっている。誤解だと叫びたい所ではあるが、今までが今まであっただけに、何を言っても言い訳にすらならないことを知っていた。

「わかっていると思いますが、マスター……」

何をするにも霊波刀を突きつけるその癖は、間違いなく母百合子の影響だと横島は思わざるを得ない。だから、言えることはひとつしかなかった。

「もちろん、自重します」

即答しつつ、横島の背中を、じっとりした汗が流れる。その言葉に満足げに頷いたほたるは、霊波刀を消した。

「さて、と、どうしましょうか」

先ほどまでの脅しが嘘のように、話しかける。

「どうしようかねぇ……」

ここまで来たはいいが、そこから先の展開を想定しきれてない。件の女性はと言えば、左手に黒茶色い革表紙の書物を抱え、目の前の変な空間を真剣なまなざしで見つめていた。女性の服装とも相まって、その姿は実に幻想的とも言える。だが。

「なぜ、ネギ?」

足下にはスーパーの買い物袋が置かれていた。買い物袋から見えるネギが、違った意味で不思議な光景を作り出している。

「あの人、一体何をしていると思う?」

横島はひとまずほたるに訊いてみた。あの真剣なまなざしや、いかにもな服装、その前に展開されている変な空間から判断する限りでは、何らかの儀式を行っているだろうと横島は判断する。また、伝わってくる魔力もどきの感覚はここ最近馴染みになっている上、夕べシグナムと名乗った女性とも酷似していた。だが、いかんせん買い物袋から覗くネギが分からない。

「さぁ……? ネギは関係ないでしょうし……」

問われたところで、ほたるにも答えがあるわけではない。

「……しばらく、様子見ましょうか」

これしか言いようがなかった。

 

戦いにはあまり長けていないシャマルの目から見ても、戦況がやや混乱しているのが分かる。もっとも、ベルカの騎士を名乗る以上、特に一対一ならば負けはない。実際、押しているのはこちら側だった。だが、長引いていいというものでもない。

「はやてちゃんに連絡をいれないといけませんね。心配、かけるわけにはいかないから」

シャマルは携帯電話を取り出し、はやてに買い物で遅くなる旨を伝え、合わせて仲間を回収して戻ることも伝えた。はやてからは急いで帰ってこなくても大丈夫とは言われたが、シャマルとしてはそうも言ってられない。早く帰って、主の喜ぶ顔を見たいのだ。そのためには、今すべきことをさっさと終わらせなくてはならない。

「さて、と」

スーパーの買い物袋を足下に置き、再度戦況を見極め始める。実際、シャマルは買い物の帰りだった。結界が張られたの感じ、何事かと思えばヴィータが魔力の反応を探っているのが見えた。さてはと思うと、ザフィーラはどこかへと飛び去っていったのが見えた。シグナムの姿は見えなかったが、じきに現れるだろうと予想し、実際、そうなった。

シャマルは他の3人と違い、直接的な戦闘力は持たない。だが、シャマルなればこそできることもある。そのためにシャマルは手近なビルの屋上へと上がり、戦況を確認し始めたのである。

「戦っているのはシグナムとヴィータちゃん、それにザフィーラね。黒い魔導師の女の子は動いているからダメ……あっちの使い魔もダメ……となると」

屋上に上がったシャマルは、状況を確認し始める。どの魔導師を“獲物”にできるのか、見定めているのだ。

「あの子ね」

そしてシャマルの視線は、一点に固定された。そこにいたのは、緑色の結界に護られた少女??高町なのはの姿であった。

「かなり大きな力を持っていることは分かるけど、今なら大丈夫でしょう。それに、あれならば20ページぐらいはすぐに行きそうだし」

バリアジャケットが解除され、消耗しきっている様子のなのはを見てシャマルはそう判断する。鉄壁とも評されるなのはの防御力は、現在は皆無に等しい。だが、そのなのはを護っているのが、あの結界であった。

「だけども……結界から出て貰わないと、無理ね」

むろん、シャマルはあの結界を破ることはできる。だが、力業になってしまうため、自分の存在を知らしめてしまう。期せずしてシグナム・ヴィータ・ザフィーラが囮の役割を果たしている以上、自分がいることを知らせるのは、得策ではない。

「さて、どうしましょう……」

小首を傾げるも、準備だけはしておく必要がある。

「クラールヴィント、お願いね」

≪はい≫

その声と共に、シャマルは指に填めたデバイスに口づける。瞬間、指輪が光り、シャマルは翠を基調とする服を身に纏った。さらにクラールヴィントをペンダルフォルムへと変化させ、旅の扉を発動させる。旅の扉は、あちら側にあるものをこちら側へと取り寄せるためのもの。取り寄せられるのは、例えばリンカーコア。

「あとはタイミングが合えば……」

前方を見据え、その時が来るのをじっと待つ。異変が起きたのは、その時だった。

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