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よこりりA’s:その16

その16

「反応を見つけたか……」

自ら感知した反応元に向かっていたザフィーラは、ヴィータも移動したことを知った。

ヴィータの相手はここ数日市内で観測されまくっている巨大な魔力反応である。本来ならばこの世界で騒ぎを起こす気のなかったヴォルケンリッターであるが、事情がやや切羽詰まってきているだけに、そうは言えなくなってきている。とは言え、今回予想される蒐集ページは恐らく20ページ以上。それだけあれば、これから先、危険が予想されるこの世界で蒐集をする必要はなくなる。言わば緊急退避的な行動であった。

もちろん、ザフィーラもまたヴィータが感知した魔力反応を感知している。距離的にはザフィーラよりもヴィータの方が近いため、ヴィータに任すことにしたのだ。いざとなれば、ヴィータの元へと転移すればいいだけのことである。

何より、ザフィーラにはもうひとつの懸念があった。ザフィーラが感じた反応は実は2つ。反応が弱々しかったために巨大な魔力反応に隠れてしまったのだろう、ヴィータは気づけなかったようであるが、ザフィーラはそれを確かに感じ取った。しかもその反応は、魔力とは若干異なる印象を受ける、別種の力であった。

「魔力とは少し違うとなると……霊力というやつか?」

となれば、先日シグナムが相手にしたというゴーストスイーパーである可能性が出てくる。仮にも守護騎士を名乗る以上、一対一ならば負けない自負はある。だが、相手は全くの未知の相手である。ならば、盾の守護獣である自分が相手にするのがひとまず妥当であろうとザフィーラは判断したのだった。

「にしても」

ザフィーラは反応を感じた場所へと到達する。

「広いな」

眼下には広大な屋敷が広がっていた。八神家も一般的な住居に比べればかなり広い部類に入るだろう。何せ、ヴォルケンリッター4人がそれぞれ個室を持てるほどに、部屋数があるのだ。部屋もそれなりに広く、しかもリビングや台所、風呂場、庭などもかなり広く取られている。だが、その屋敷は八神家をはるかに凌ぐ広大な敷地の中にあった。

「……反応があったのは、ここだが……」

ザフィーラは首を少し傾げる。

「ヨコシマ、ではない……?」

ザフィーラはシグナムからヨコシマタダオについて聞いている。GS年鑑程度ではあるが、それでもある程度の情報は手に入れられる。それによれば、ヨコシマタダオは東京在住とのこと。そんな人物が東京から2時間以上も離れた海鳴に住んでいるとは考えにくかった。ゴーストスイーパーは総じて高給取りとも聞いているが、だからといってこんなところに別荘を持っているとも考えにくかった。

「ヨコシマとは別と考えた方がよさそうだな」

ザフィーラはひとまずそう結論づける。

「何にせよ、降りてみればわかるか」

そう呟くと、ザフィーラはそのまま屋敷の中庭とおぼしき場所へと降下した。

 

「一体何が起きてるの……」

アリサはバルコニーに出ていた。急に色あせた風景、そして妙に重苦しい雰囲気は、紛れもなくあの日に感じたもの。だからこそ、アリサはまた自分が結界に取りこまれた、あるいは取り残されたことを悟った。だが、なぜ結界が張られたのか、アリサにはわからない。可能性としては、またこの前みたいな悪霊が襲ってくることであろう。だが、アリサには悪霊がやってくる気配は感じ取れなかった。その代わり、霊力とは少し違う何かが近づいてくるのを感じ取る。力の発生源が市内の中心部からこっちに近づいてきている以上、それはアリサを目指しているとしか考えられなかった。しかもその力はあまりにも強大である。故に、アリサはそこから動けないし、逃げられない。もっとも、逃げようにも逃げ道があるわけでもなかったが。だから。

‐‐‐‐動いても、どうしようもないのは分かってる。

あきらめにも似た思いが生まれるのは仕方がなかった。

‐‐‐‐だったら、せめて相手の顔だけでも見てやらないと気が済まないんだから。

しかし、アリサにも意地はあった。相手が何者であろうとも、決してくじけず、負けない。それがアリサのポリシーである。だから、顔を上げ、拳を握りしめ、両の足をしっかりと踏ん張り、力が来るであろう方向をしっかりと睨み付け続ける。だから……胸元の精霊石が淡い光を放っていることに、アリサは気づかなかった。

 

ザフィーラの視界に、ひとりの少女の姿が映る。栗色がかった金色の長い髪が風に揺れ、大きな目を見開いていた。その瞳は、綺麗な蒼を見せている。見たところ主はやてと同い年ぐらいに見える少女であった。

「なぜこんな所に……」

ザフィーラは困惑するも、ひとつの結論を出さざるを得なかった。

‐‐‐‐彼女こそが、反応の源。

しかも、少女から魔力に似た何かを確かに感じ取っていた。あの魔力に比べれば反応は弱いものの、結界内に取り残される程度の力を持っていることは確かである。

「魔力とは確かに少し違うようだが……蒐集は、できるかもしれないな」

ヴィータが張った結界は、言わば狩り場。必要な相手のみを選択し、それ以外は除外する。そうである以上、例え霊力と言えども蒐集はできるはずであった。とは言うものの、あまり気が進まないというのが、ザフィーラの正直な気持ちであった。何せ相手は主はやてと同い年ぐらいの少女である。この少女を襲うことは、なんとなく主を襲うことと同じような気がして、気が引けた。もっともヴィータならば問答無用で仕掛けたであろうが。

‐‐‐‐だが自分は……

「それでもやらねばならん」

ザフィーラは自らに言い聞かせる。迷いは絶たねばならない。相手が誰であれ、リンカーコアがあるのならば、蒐集しなくてはならない。そうしなくては、敬愛すべき主が死ぬ。それだけは何としても避けなくてはならなかった。はやては、これまで道具として扱われてきたヴォルケンリッターを、人として扱ってくれた初めての主であり、さらに言えば、初めて平穏であることを与えてくれた。それだけに、ヴォルケンリッターがはやてを慕う気持ちは非常に強い。もちろん、ザフィーラも。かくしてザフィーラは迷いを断ち切り、少女の前へと身体を浮かせた。

 

緊張の糸が張りつめる。心臓の鼓動がさらに早くなるのを感じる。呼気がだんだんと浅くなってくるのを感じ取る。不安を隠すかのように、胸元の精霊石を強く握りしめる。そして……視界がなぜか変わったことに、アリサは気が付いた。

世界は相変わらずくすんでいる。空気が重いのも変わらない。しかし、それとは別の、言葉では表現できない別の世界を、アリサは感じ取っていた。その世界の発信源が、植物や風、水といったアリサを取り巻く自然であることを、アリサは直感的に感じ取る。そして、そんな世界の中に、異様とも言える力の持ち主が居ることも、それこそが市内からやってきた招かれざる客であることも、アリサは感じ取っていた。

そんなアリサの耳に、何者かが草を踏む音が聞こえる。アリサは反射的にそちらへと視線を向けた。

「犬?」

そこにいたのは、建物の角から現れた一匹の獣であった。青い毛並みと白いたてがみをもつ大型犬である。

「犬種は何なんだろう……」

精悍さと野性味すら感じさせるその犬は、これまでアリサが見たことのない犬種であった。アリサは犬好きで知られる。写真集や図鑑だってたくさん持っている。それこそ諳んじられるほどに、すり切れるほどに何度も読み返した。だからこそ断言できる。あれは、新種だ、と。

しかもその犬は、なぜか足に鞜のようなものを履いている。犬に服を着せるのもさほど珍しくない現在、鞜を履く犬がいてもおかしくない。

「立派な犬なのはわかるんだけど……」

だがアリサは困惑していた。なぜかその犬に、姿に違和感を感じていたためである。その違和感の正体を感じ取ろうとして、アリサはふと気が付く。本来この世界に、動物などいるはずがないのだ。今この屋敷にいるのは、自分だけ。両親も鮫島も、そして犬たちも居ない。そもそもここに見知らぬ犬がいれば、屋敷の犬たちが騒ぐはずなのだ。

‐‐‐‐それなのに、なぜ犬がいるの?

それこそがアリサの感じていた違和感の正体であり‐‐‐‐恐怖でもあった。アリサはさらに精霊石を握りしめる。アリサの感情に反応したのだろうか、精霊石が発光し、熱を発した。精霊石を握りしめている手を中心に、身体中に霊力が巡る。そんなアリサの視界に、可視化された力の波動が浮かび上がる。さっきまで見えていた世界をはるかに上回る強烈な視覚。そのあまりもの強烈さに、アリサは思わず酔ってしまう。

アリサが無意識のうちに行ったのは、霊視であった。姿なき姿を視、形なき形を視る、基礎にして深淵な霊能。極めれば、時間と場所を越えて、望むありとあらゆる事象を瞳に映し出す。今アリサを見る者がいたら、その双眸が蒼色に変わっていることを知るだろう。だが、当のアリサには、霊視のことも瞳のことも、知る術はない。ましてやそれを引き起こしたのが、手中で輝いている精霊石であることも。

そうこうしているうちにその犬は歩みを止め、アリサをじっと見上げた。

‐‐‐‐結構間の抜けた顔が映っているんだろうな。

ふとそんなことを思う。

と、その犬がアリサの目の前へと現れた。

「へ?」

突然のことにアリサは虚をつかれた。自分がいる場所は2階、犬がいるのも2階、つまり自分の目の前は、空中。

「浮いて、る?」

そう、その犬は浮いていた。その犬がしゃべり出すのにいたって、アリサはさらにパニックに襲われる。

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