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よこりりA’s:その14

その14

同日昼間、八神家。

ヴォルケンリッターの面々はリビングに集合していた。早い場合はこの時間帯から蒐集作業に出かけることもあるが、今日はまだ出かけていない。理由はひとつ。シグナムが夕べ対峙した相手??ヨコシマタダオのことを聞くため。ちなみにはやては部屋に籠もって勉強の最中である。シグナムが夕べのことを話せるのは、そのためでもある。

「で、どうだったんだ?」

口火を切ったのはヴィータであった。よほど相手のことを知りたいのだろう、声色には楽しそうな感情が含まれている。そんなヴィータの早く話せとばかりの口調に、シグナムは苦笑いした。ヴィータは普段シグナムのことをバトルジャンキーと揶揄するが、なかなかどうしてヴィータもそれなりにジャンキーである。もっとも本人は決してそれを認めようとはしないが。

「そうだな」

だからシグナムはそのことには触れず、ひとまず夕べのことを話す。

「一言で言えば、強いな。随分と戦い慣れしている。それも格上との、な」

その言葉にほうとヴィータの目が軽く開かれる。ベルカ式魔導師の中でも騎士と呼ばれる程の遣い手、しかもヴォルケンリッターの将を勤める程の剣士であるシグナムをしてそう評価せしめる相手は、ヴィータの記憶の中でも数えるほどしかない。それはザフィーラもシャマルも同じだったのだろう、2人の目も軽く見開かれていた。

「最初は何度もかわされたし、棒と言っていいのか剣と言っていいのかわからんが、それが出てからは何合も打ち合った。だが、どれも決定打に欠けたな」

その時は地上戦であったし、魔力は這わせたもののカートリッジを使ったわけではない。どちらかと言えば純粋な剣技での勝負だった。だが、普段ならそれだけであっさりと決着が付くにもかかわらず、夕べに限ってはそうはいっていない。そう話すシグナムに3人はそうかと返すのみだった。

「だが奴の剣技は……並以上ではあるが脅威というほどのものでもない。やり合っているうちに決着は付けられただろうな。だが、戦い慣れしてることは事実だ」

「……そうか」

ヴィータは考える。剣を得意とするシグナムは、対峙した相手の技量を正確に推し量る。そのシグナムがそう評価するのならば、ヨコシマの技術はさほどではないのかもしれない。
だが、技術の差を埋める技量と経験を持っていることもまた、間違いのない事実なのだろう、と。実際、魔導師の中でもエリートが揃う傾向にある時空管理局にあっても、シグナムと対峙できる者は非常に限られる。つまりは、ヨコシマは間違いなく、時空管理局AAAランク以上。

「問題はそれだけではない……のよね?」

シャマルがシグナムに問いかける。シャマルもまた、シグナムから見過ごすことのできない事実を聞いていた。そんなシャマルの問いかけに、シグナムは頷いて返す。

「いくら戦い慣れしているとは言え、経験ならば我らも負けん。むしろ我らの方が上のはずだ。だが……」

シグナムは一端言葉を句切る。

「レバンティンに纏わせた炎と魔力を解除されるとは思わなかったな」

その言葉にヴィータとザフィーラは絶句し、事前に聞いていたシャマルは顔つきが厳しくなる。魔力を解除されたということは、魔法を解除させられたと言うことである。つまりは、使えない。それは技術の基礎に魔法・魔力を置く次元世界にあっては脅威の技術としか言いようがなかった。

もっともシグナム達を驚嘆せしめた横島の技術は、実のところゴーストスイーパーにあっては基本とも言える技術である。霊能の基本は、場と力の有り様を知覚することにある。生物にせよ霊にせよ神族・魔族にせよ、さらにはあらゆる現象は、全て場と力の有り様の影響下にある。なればこそ、その有り様を知覚し、操ることにより、相手に何らかの影響を及ぼすことができる。それが霊能力あるいはオカルト技術の根幹である。

「おそらくあの時聞こえた呟きが解除させたのだろうな」

シグナムは推測だがなと付け加えるも、内心では確信していた。

「そう言った意味では、戦いにくいな。いくら剣技で勝てようとも、それだけで霊力にどこまで対抗できるかわからん。かと言って魔法を使おうにも‐‐‐‐」

「‐‐‐‐解除されたら堪らん、というわけか」

シグナムの言葉を受けたザフィーラは深い溜め息を付く。

「ゴーストスイーパーって、みんなああなのかしら」

シャマルの疑問は皆の疑問でもある。

「さぁな。何せ奴としか対峙してないのだ、わからん。だが、あんなことができる奴がそうそういるとも思えん……」

実際、横島のように力の有り様を消滅にまで至らせる技術は、さすがに誰もが操れるわけではない。シグナム達もさすがにゴーストスイーパーの全員がそのような真似ができるだろうとは思っていない。だが、横島とはこれからも対峙する可能性のある以上、そして場合によっては他のゴーストスイーパーと対峙することもある以上、対策を立てる必要はあった。

「紫電一閃かテートリヒ・シュラークだとどうだ?」

どちらもシグナムやヴィータの持つ魔法の中でも大技である。その破壊力は、条件次第ではあるが一撃で戦艦を沈めることができるほどである。それだけに使用する魔力も解放される魔力も大きい。そう簡単には解除できないはずである。

「大丈夫、だとは思うが……」

そう答えるも、シグナムの歯切れは悪い。己の魔力とカートリッジの消費を度外視すれば、対応することは可能だろうとは踏んでいた。だが、それでも万が一と言うことがある。

「こちらも全部を見せたわけではないが、向こうとて全部を見せたわけではない、はずだ。予想外のやり方で対処される可能性もあるしな」

戦い慣れしている以上、必ずしも力業だけではないだろうとシグナムは付け加えた。逃げ方を含めた戦い方の巧みさがどうしてもそう思わせるのである。

「しかも結界は破られていないのよね」

シャマルの問いかけにシグナムは渋い表情を見せながら頷いた。予想外のやり方を想像せざるを得ないのは、結界を破ることなく逃げ切られたことも影響している。そしてそれは、シャマルが一番気になっていた事でもあった。

後方支援に秀でたシャマルの張る結界は、ヴォルケンリッターの中ではトップクラスの精度と硬度を誇る。だが、シグナムやヴィータの張る結界もまた、シャマルには及ばないものの超一流と言える精度と硬度を誇る。その結界から逃げおおせた者は、長いヴォルケンリッターの歴史の中でもそういるわけではない。だいたい結界から逃げ出すためにはその結界を解除しなくてはならない。だが、シグナムの張る結界は、時空管理局ですらその解除に手間取るほどに強固である。個人技能としては間違いなくトップクラスなのだ。それだけにシャマルは、横島が結界から転移したことに危機感を覚えていた。

「実際、どうやって逃げられたのかわからん。逃げたと見せかけて気配を消し去っていた可能性もあるが……それはそれで恐るべき遣い手ということになる。どちらにしても面倒な相手だ」

「そのゴーストスイーパーのことはよくわかった。でだ、リンカーコアはあったのか?」

どう相手をしようかと考え込むシグナムに、ヴィータが問いかける。今回の襲撃はそれが一番の目的だった。ゴーストスイーパーがリンカーコアを持っていれば、目的をより早く達成することができる。だが返ってきた答えは‐‐‐‐

「よくわからん」

‐‐‐‐というものだった。そんなシグナムにヴィータは上目で睨む。

「そんな表情をするな。確認するしない以前の状態だったんだ」

そう言うシグナムの表情もまた、苦虫をかみつぶしたような表情であった。

「それはそうだけどさ……」

それはヴィータもよくわかっていた。だが、感情として納得しきれていない。

「ならこれから……」

「ヴィータ、よせ。収穫はあったのだ」

どうするんだと食いかけるヴィータに、ザフィーラが割って入った。その声にヴィータは動きを止め、ザフィーラに振り返る。

「収穫?」

「結界は条件付きだったのだろう? ならば結界内にいたということは、間違いなくリンカーコア、あるいはそれに類するものがあるということ。ない者があの中にいられるわけがないのだからな」

その声にシグナムとシャマルが静かに頷く。

「ならばあると考えて動いても損はない。蒐集できるできないは、また確認すればいいだけだからな。それに、我々に分があるのだ。霊能力というもの、ゴーストスイーパーというものの一端がわかった。何より奴は名乗ったのだ、対応のしようはいくらでもある」

ヨコシマタダオ。ゴーストスイーパー。となれば、GS協会なり何なりで調べようある、というのがザフィーラの弁である。言われてみればそうなだけに、ヴィータとしても引き下がるしかなかった。

とは言え、どことなく収まりの付かないヴィータは、立ち上がり、リビングから出て行こうとする。

「いくのか」

そんなヴィータにザフィーラが後ろから声をかける。

「ああ。このままじゃ収まりがつかねーし、できることからしないとダメだしな」

ヴィータは振り返ることなく答えると、そのままリビングを出て行った。

「……全くヴィータちゃんは……」

シャマルはぶつぶつ言うも、それもまた仕方のないこととして受け取っていた。ヴィータが焦りとも言える感情を見せているのは、全てははやてのため。もちろん3人もそれなりの焦りを持っているが、ヴィータははやてを姉のように慕っているだけに、なおのこと強かった。そのことがわかっているだけに、3人としては苦笑するしかなかった。

「私が付いていこう。ヴィータひとりだと、ちょっと不安だからな」

そう言うとザフィーラも立ち上がる。

「2人は主を頼む。今日は病院なのだろう?」

「ああ」

「では、行ってくる」

シグナムの返事に、ザフィーラは満足げに頷き、部屋から出て行った。

「私は病院の時間までカートリッジを作っているわ。たぶん、今まで以上の消耗戦になるはずだから」

これから先もゴーストスイーパーと対峙するとなれば、想定外の消耗戦に持ち込まれる可能が出てくる。それに魔力を打ち消された場合、素早くカートリッジをロードして魔力を補充し高める必要がある。そのためには、カートリッジは多いに越したことはない。そのためにシャマルはとにかくカートリッジのストックを急ぐことに決めたのだ。

「そうか。世話をかけるな」

カートリッジを作れるのは、ヴォルケンリッターの中ではシャマルただひとりである。

「ううん、それが私のお仕事だから。それよりもシグナムはどうするの? 少し休む? 昨日は何だかんだで結構魔力を使ったのでしょう?」

「お前達の将はそれほど軟弱にはできていない」

シグナムは苦笑する。

「それに、疲れは取れているから大丈夫だ。もちろん魔力もな」

「そう……」

「とは言え、道場はまだ開いてないしな。折角だから図書館にでも行ってみようと思う」

シャマルは顔を上げてシグナムの顔をまじまじと見る。シグナムの口から図書館という言葉が出たのに、驚いたらしい。

「……そんなに驚くことか?」

「ううん」

シャマルは首を横に振る。

「ただびっくりしただけよ」

それを驚いているというのではないかとシグナムは思うが、口に出すのを止めた。

「いや、何、GS年鑑というのを見てみようかと思ってな。図書館にあると聞いたし、見れば少しは何か分かるだろう」

それを聞いてなるほどとシャマルは頷いた。GS年鑑は、ゴーストスイーパーの名簿のようなものであり、GS協会から毎年出版されている。またGS白書も毎年刊行されており、前年度の霊障傾向や特記事項などが記載されている。官報に準ずるため、どちらも公立の中央図書館で閲覧することができる。GS年鑑なら、確かにヨコシマタダオのこともわかるだろう。

「じゃあ図書館で合流しましょう。はやてちゃんにもそう言っておくわ」

「すまないな」

「いえいえ、行ってらっしゃい」

シグナムがリビングを出て行くのを見送ると、シャマルは再びカートリッジ作りに没頭し始めた。

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