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よこりりA’s:その13

その13

時計の針は11時を過ぎを指していた。朝のラッシュは終わったが、これからは買い物客が多く行き交う時間帯となる。そのためであろうか、海鳴駅のコンコースもまた人が多く行き交う。

そんな中、行き交う人々の注目を浴びている集団があった。場所は改札口真正面にある鉄道会社直営のコンビニ。人数は3人。ひとりは、銀髪が特徴的な、高校生ぐらいの少女‐‐‐‐ほたる。ひとりは、黒マントを羽織った白髪の老人‐‐‐‐ドクターカオス。そしてひとりは、赤いワンピースを纏った、金髪が特徴的な、やや年上の少女‐‐‐‐マリア。つまりは、横島の要請を受けてほたるが連れ出してきた、助っ人の錬金術師とその娘にして助手である。

その3人の中でも特に視線を強く受けているのがカオスであった。だが天才とも天災とも言われる希代の錬金術師であるがために視線を受けているわけではない。当然ながら一般人はそのようなことは知らない。ただ、外見的にあまりにもアンバランスな組み合わせに、行き交う人々は奇異の視線を向けていたのであった。

 

「なんか落ち着かんものじゃな」

回りから受ける視線が妙に痛いんじゃがの、とカオスは呟く。

「……祖父と孫の図、だとは思うんですけどね」

ほたるはそう言って苦笑する。さすがに、カオスの格好が注目されているとは、口が裂けても言えない。

「それは……別に構わんのだがの」

カオスは溜め息をついた。

「目立っていることに代わりはないわい。ま、約束の時間より早めに着いてしまったからな、仕方もないわ」

何度も繰り返された遣り取りである。

 

マリアはと言えば、2人の遣り取りには何ら興味も示さず、ひたすら駅の入り口へと視線を向けていた。マリアは傍目には無表情の美女と言った感じであるため、マリアに視線を向ける者も多い。だが、マリアはそんな視線は全く頓着していていなかった。ひたすら、入り口に視線を向け続ける。そして‐‐‐‐

「ドクター・カオス。横島さん・が・来ました」

‐‐‐‐待ち人が現れたことを告げた。音節ごとに区切る独特の節回しに反応したほたるは、自らもマリアの視線の方へと目を遣る。

「あ、本当ですね。マスターです」

ほたるは人混みの中をた赤いバンダナが動いているのを見る。彼女もまた、待ち人が現れたのを確認したのだった。

「やれやれ、やっと来たかの」

カオスはと言えば、待ちくたびれたとばかりに大きく伸びをした。

「にしても」

カオスはほたるをちらりと見る。

「マリアの方が先に見つけるとは。てっきり嬢ちゃんの方が先に見つけるのかと思ったのじゃがの」

カオスの視線の意味を悟ったほたるは、軽く苦笑する。

「マリアさんはマスターの霊波パターンを記憶していますから、マリアさんの方が早いのは当然です」

横島とカオス・マリアの付き合いは2年ほど前からである。当初の出会いは強烈であった。僅かな時間だったとは言え、カオスは横島の身体を乗っ取ったのだから。乗っ取られた時間は僅かであり、本来ならばそこで2人は別れるはずであった。だが、なぜか横島はカオス・マリアとの付き合いが続き、しかもその密度は不思議と濃いもの‐‐‐‐つまりは騒動に巻き込まれることが多かった。しかも横島はカオスすらなしえなかった偉業‐‐‐‐マリアの感情を育てること‐‐‐‐を成し遂げている。そのような諸々から、マリアにとって横島の霊波パターンは非常に馴染みのあるものであった。

「……それに、マスターの意向がありますから」

ほたるは寂しそうに呟く。必要とあらば、ほたるもまた横島を遙か遠くから見つけることができる。だが、今は敢えてそのようなことはしていない。

「ま、いいんじゃがの」

カオスはほたるの感情の裏にある事情を知っている。そのためにカオスは、それ以上何も言わなかった。それはあくまでも横島とほたる2人の間の問題なのだと知っているためでもあった。

 

横島が駅に着いたのは、そろそろ待ち合わせ時間になろうかという頃であった。

「うし、時間ぴったり」

歩いても充分に間に合う程度には余裕を持たせたつもりではあるが、それでもまだ不案内な町中である。本当に時間通りに着くか不安ではあった。

「……結構人通りが多いな」

ターミナル駅、しかも繁華街も近い土地柄であるため、人通りはかなり多かった。そのため3人を見つけられるか不安になった横島ではあるが、その不安はあっさりとぬぐい去られる。回りより頭ひとつ高いマリア、小柄ではあるが銀髪が特徴的なほたる、何より白髪に黒マントという怪しさ大爆発のカオス。かなり特徴的な3人が揃っているために回りの視線がそちらに向いており、そのために横島もあっさりと見つけることができたのであった。

「ごくろうさん、ほたる。それとマリアとじーさんもありがとうな」

しゅたっと手を挙げ、軽く挨拶する。

「ノー・プロブレム。横島さん」

「それで小僧、マリアに用とはなんじゃ。いつぞやの魔力もどきの反応絡みだと聞いておるが」

「そうだな……」

3人と合流した横島は、回りの視線が己にも向けられていることを悟っていた。

「ここじゃなんだから、場所を移そう」

それに、立ち話で済むような内容でもなかった。横島は踵を返し、歩き出す。3人も横島の心情を痛いほど理解できるために、おとなしく着いていった。

 

場所を変えようとは言ったものの、横島は部屋に直行する気もなかった。寝泊まりする分には充分に余裕のある部屋ではあるが、かと言ってずっと4人でというのも気が詰まる。しかし外で4人がまとまって入れるところとなれば、喫茶店がファミレスぐらいしかない。

「マスター、どこに行きます?」

先陣切って歩き出したものの、横島は行く宛なく歩いているようにも見える。そのためにほたるは横島に尋ねたのだが‐‐‐‐

「……翠屋でいいんじゃない? そこそこ広かったし」

「翠屋……ですか?」

‐‐‐‐返ってきた答えは、予想外とも言えるものであった。海鳴に着て以来何度か通っている喫茶店である。それだけに翠屋に行くこと自体に反対はなかった。だが、この面子で行くには少し憚れるというのがほたるの正直な感想である。何せ外観が瀟洒な喫茶店は、値段と味に惹かれた女性客でにぎわっていることが多いのだ。そんなところに行けば、コンコース以上に目立つこと間違いなしである。

「入れそうな店と言ったらあそこしか思い浮かばんし……」

横島は、郊外のバイパスにファミレスがあるのを確認してはいた。だが、バイパスまでは遠く、さすがに歩く気にはなれない。かといって駅そばでは喫茶店は案外と少なく、あったとしても狭いために4人入りきれるか不安であった。

「ついでの用事ができるかもしれないしな」

「ついで、ですか?」

「あくまでもついでだ。昼間だからな、たぶん、できんだろうし」

翠屋にはもうひとつの、別の目的があった。場合によっては、そちらが重要と言えるほどの、目的である。ついでの用事‐‐‐‐つまりは、魔力もどきの詳細なパターンを観察し、記録すること。そのことを察したほたるは、軽く目を見開いた。

 

翠屋は言わずとしれた有名喫茶店である。午前中から午後にかけてはご近所の主婦を中心に、午後には学校帰りの学生が加わり、さらに夕方以降は仕事帰りのOLが加わるという客層??つまりは女性客を見せるものの、年がら年中混んでいるわけではない。客の来ない、間の空いた時間というのは必ずある。横島達が翠屋に着いたのは、そんな時間帯であった。ただ、空いているとはいえ店内はそれなりににぎわっており、客層が女性中心なのは、変わらない。

「何とも小僧っぽくない所を選んだもんじゃの。……いや、らしいというべきかの」

あまりにも女性客が多いその店内に、カオスは圧倒される。ひとつは、ベルと共に店に入ったカオスに集中しだした視線にあった。横島とほたるとマリアはさておき、カオスは老齢であること以上に、黒マントを羽織るといういかにもな格好であったために、コンコース以上の視線に晒されたのである。だが横島はそんなカオスを無視し、店員に人数を告げる。
そして、案内された席へと向かった。そこまで来ればカオスも観念せざるを得ない。おとなしく横島の後を付いていった。

「さて、と、小僧。話して貰うぞ」

席に着き、注文を終わらせたカオスが横島に話しかける。席に着く頃には、カオスに向けられる視線は薄れていた。視線に面倒くさくなったことに加え、話の内容が内容なものになるだけに、カオスが人除けの結界を張ったためであった。もっとも完全な人除けでは店員にすら忘れ去れてしまい、さらには不自然までもが生じてくるため、効果を低く抑えている。

「そうだな……俺たちがここに来たきっかけは、もう聞いているよな? それと頼みたいことも」

「うむ。マリアが感知した魔力もどき。その反応を追いかけてきたと聞いとる。そのトレースだったな」

「Yes。現在も・感知して・います。詳しい場所まで・は・不明ですが」

「……感度いいんだな」

遠く離れた海鳴での反応を東京で捉えたほどである、その感知能力の高さは確かに折り紙付きであった。だが、式神を通してすら感知しきれていない反応を、マリアは捉えているとなれば、それはやはり驚異的であった。恐るべきはマリアの能力かそれを生み出すカオスの能力か、である。

「でもまあ、感知しているんなら、ちょうどいいかも。話は早いし」

ならばと、横島は、爆弾を投下する。

「……夕べだけどな、襲われた」

途端にほたるとカオスの雰囲気が変わる。ほたるの表情は消え去り、カオスは面白そうな表情を浮かべる。横島達のいる席だけが、空気が変わった。その空気の変化は、人除けの結界の効果を越えて、回りとの落差を生み出す。

「ま、襲われたと言ってもな、とっとと逃げたからな。気にするな」

「そう、ですか……」

横島にそう言われるも、ほたるの表情は硬い。

「……で、小僧。どうした」

カオスに促されて、横島は話を続ける。話のキーワードは、管理局、リンカーコア、魔導師、ベルカの騎士、守護騎士ヴォルケンリッター、何より、もともとのきっかけとなった魔力もどき。
ついでに、シグナムと名乗る女性から感じた、違和感。

「あの女性はリンカーコアとやらを探していた。なんでも魔導師を魔導師たらしめている資質、なんだと」

横島は小竜姫然した雰囲気を漂わせていた女性を思い出す。

「まぁ、夕べのはどっちかと言えば、武人と言った感じだったけどな。それに、腕は間違いなく小竜姫様、メドーサクラス」

美神さんクラスでもあったなとは、さすがに言えなかった。

「じーさんは聞いたことないか?」

「どこかで聞いたことがある、ような気はするのじゃが……」

横島に尋ねられたカオスは首を傾げる。

「魔法使い、ならまだしも、魔導師を名乗る者なぞ聞いたことはないからの。いたら記憶に残るはずなんじゃが……リンカーコアというのも、な」

「まぁ、知らないなら知らないでいいんだけど……」

横島は、ぶつぶつぶつと記憶の掘り起こしに入ったカオスを横目に見る。

「マリアに頼みたいのは、さっきも言ったように魔力もどきの正確な追跡と分析。それとできるのならば、リンカーコアとやらの確認だ」

‐‐‐‐できることならここでやりたかったけどな。

その呟きは、カオスとマリアには聞こえない。聞こえたのは、ほたるのみであった。

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